【解説】第6世代戦闘機とは ― GCAPを題材に、F-35(第5世代)との違い

日英伊が共同開発する次期戦闘機「GCAP(Global Combat Air Programme)」が本契約に進み、「第6世代戦闘機」という言葉をよく見かけるようになりました。では、F-35に代表される「第5世代」と何が違うのでしょうか。難しい専門用語をできるだけ避けて、世代の意味、第6世代の5つの特徴、GCAPの中身、そして他国の計画までを、順を追ってやさしく整理します。
そもそも「世代」とは
戦闘機の「世代」は、技術の大きな飛躍で区切った、ざっくりした呼び方です。厳密な国際規格があるわけではなく、目安として使われる言葉ですが、技術のおおまかな進化をつかむには便利です。まずは、これまでの世代の流れを見てみましょう。
図:戦闘機の世代のおおまかな流れ
第4世代は高い運動性能と高性能レーダーを備えた戦闘機で、F-15やF-16、日本のF-2などがこれにあたります。第5世代は、レーダーに映りにくい「ステルス」と、多くのセンサー情報を1枚の状況図にまとめる「センサー融合」が売りでした。F-35やF-22がこの世代です。そして第6世代は、その第5世代を土台に、さらに次の要素を積み上げた戦闘機を指します。まだ世界のどの国も実戦配備しておらず、各国が開発を競っている段階です。つまり第6世代は、いま各国が「どんな戦闘機を作るべきか」を模索しながら形にしている、進行中の挑戦なのです。
第5世代(F-35)との違い ― 5つのポイント
第6世代の中身は各国で少しずつ違いますが、GCAPなどで共通して語られる要素は、おおむね次の5つです。順に、なぜそれが重要なのかを見ていきましょう。
第6世代の主な特徴
- センサー融合の高度化:レーダー・赤外線・電子戦などの情報を、パイロットが意識せずとも1枚の状況図に自動でまとめる度合いがさらに進む。
- 随伴無人機(ロイヤル・ウィングマン):有人機が、複数の無人機を子分のように連れて飛び、偵察・囮・攻撃を分担させる。パイロットは「監督」に近づく。
- AI(人工知能)の活用:脅威の判断や無人機の管制をAIが補助し、パイロットの負担を下げる。
- ステルスの進化:形状だけでなく、内部構造や整備のしやすさまで含めて、見つかりにくさをさらに突き詰める。
- 可変サイクルエンジン:速さ重視と燃費重視を状況に応じて切り替えられる新型エンジンで、航続距離と性能を両立させる。
① センサー融合の高度化。現代の戦闘機は、レーダーや赤外線センサー、電子戦装置など、多くの「目」を持っています。第5世代はこれらの情報を融合してパイロットに見せますが、第6世代ではその度合いがさらに進み、大量の情報をAIが整理して、パイロットが直感的に状況をつかめるようにします。情報が多すぎて処理しきれない、という問題を技術で解く方向です。
② 随伴無人機(ロイヤル・ウィングマン)。第6世代の最大の特徴とも言えるのが、これです。有人のGCAPが、偵察・囮・攻撃を担う無人機を複数引き連れて飛び、パイロットはそれらを「監督」します。危険な任務を無人機に肩代わりさせられれば、有人機と乗員の生存性が高まります。1機の有人機が複数の無人機を従えることで、実質的な戦力も増します。
③ AIの活用。無人機を何機も管制し、大量のセンサー情報を処理するのは、人間だけでは手に余ります。そこでAIが、脅威の見極めや無人機への指示を補助します。最終的な判断は人間が下しますが、AIが下ごしらえをすることで、パイロットは重要な決断に集中できます。
④ ステルスの進化。第5世代でも重視されたステルス(見つかりにくさ)は、第6世代でさらに突き詰められます。機体の形状だけでなく、内部構造、塗装、整備のしやすさまで含めて、レーダーや赤外線に映りにくくする工夫が凝らされます。見つからずに近づき、先に見つけて対処する――これが空中戦の大原則だからです。
⑤ 可変サイクルエンジン。エンジンは戦闘機の心臓です。第6世代では、状況に応じて「速さ重視」と「燃費重視」を切り替えられる新型エンジンの開発が進みます。広い作戦範囲を長くカバーでき、将来の高性能レーダーやレーザー兵器が必要とする大きな電力もまかなえます。開発は難しく、計画全体の技術的な難所でもあります。
ひとことで言えば、第5世代が「一機の性能を極めた戦闘機」だとすれば、第6世代は「無人機やネットワークを従える、空の司令塔」に近づく、という方向性です。
ざっくり比較:第5世代 と 第6世代
基本は有人単機の高性能化
ネットワークの中核として戦う
GCAPと日英伊の分担
GCAPは、日本・英国・イタリアの3か国が対等に近い形で共同開発する計画です。英国はBAEシステムズやロールス・ロイス、イタリアはレオナルド、日本は三菱重工やIHIなどが中核を担い、2024年に3か国合弁の事業体「エッジウィング(Edgewing)」が設立されました。2026年にはこの合弁に設計・開発の本格的な契約が結ばれ、計画は次の段階へ進みました。就役の目標は2035年とされ、日本にとってはF-2の後継機にあたります。
なぜ3か国で組むのか。第6世代の開発費と技術は、いまや1か国では抱えきれないほど巨大だからです。費用と役割を分け合い、それぞれの得意分野(機体、エンジン、電子機器など)を持ち寄れば、負担は軽くなり、量産数も増えて単価も下がりやすくなります。日本にとっては、戦闘機を自国で開発・生産する技術基盤を、国際共同開発を通じて維持・強化する狙いもあります。

他国の第6世代 ― アメリカと欧州
第6世代を目指しているのはGCAPだけではありません。アメリカは「NGAD」と呼ばれる次世代の制空戦闘機計画を進め、随伴無人機(CCA=協働戦闘機)との組み合わせを重視しています。欧州ではフランス・ドイツ・スペインが「FCAS」という別の計画を進めてきましたが、2026年には主導権をめぐって事実上行き詰まったと報じられました。共同開発は費用を分け合える利点がある反面、誰が主導しどの技術を担うかで対立しやすく、その難しさが表面化した形です。
こうしたなか、GCAPは「西側で前進している数少ない第6世代計画」という位置づけを強めつつあります。日本が、欧州やアメリカと並ぶ次世代戦闘機の開発国の一つになろうとしている――これは、日本の防衛産業にとって歴史的な挑戦でもあります。うまくいけば、日本は最先端の戦闘機技術を自国に根づかせ、将来の防空を自らの手で支える力を得ることになります。
「無人機を従える」とはどういうことか
第6世代を理解する鍵は、「戦闘機は一機で完結しない」という発想の転換にあります。従来は、優れた一機をいかに作るかが競争の中心でした。しかし無人機が安く、賢くなった今、有人機一機に複数の無人機を組ませ、チームとして戦わせる方が、費用対効果が高いと考えられるようになりました。高価な有人機を危険な最前線に晒す代わりに、使い捨ても許容できる無人機を先行させる――そんな戦い方が現実味を帯びています。
この考え方では、パイロットの役割も変わります。自ら操縦桿を握って敵と撃ち合うだけでなく、後方からセンサーと無人機の群れを束ね、戦況全体を差配する「監督」や「管制官」に近づいていきます。人間は最終的な判断(とくに攻撃の可否)を担い、細かな管制や情報整理はAIと自動化に任せる。第6世代は、こうした人間と機械の新しい分業を前提に設計されると言われます。
第6世代の課題 ― バラ色ばかりではない
もっとも、第6世代には課題も多くあります。まず、開発費が極めて高額で、計画の遅延やコスト超過のリスクが常につきまといます。第5世代のF-35でさえ、開発と初期運用には長い時間と巨額の費用がかかりました。次に、AIや無人機との連携といった新技術は、まだ発展途上で、実戦で確実に機能させるには多くの試験が必要です。さらに、無人機やネットワークに依存するほど、電子戦(通信やGPSの妨害)やサイバー攻撃への強さが問われます。つながることで強くなる一方、つながりを断たれたときにどう戦うか、という新しい弱点も生まれます。
だからこそ、第6世代の戦闘機は「完成した理想」ではなく、これから各国が試行錯誤しながら形にしていく「途上の技術」だと理解するのが正確です。就役目標の2035年に向けて、GCAPがどんな姿に仕上がっていくのか――その過程そのものが、これからの航空戦力の行方を映す鏡になります。
まとめ
- 第6世代=第5世代(ステルス+センサー融合)に随伴無人機・AI・新型エンジンを足した次世代機。
- 一機の性能より、無人機やネットワークを束ねる「司令塔」としての役割が特徴。
- GCAPは日英伊の共同開発(合弁エッジウィング)、就役目標2035年、日本ではF-2後継。
- 米はNGAD、欧はFCAS(失速)。GCAPは西側で前進する数少ない計画。